MARC MANIAX 目録2022も9回目になりました。
「MARCは本の戸籍のようなもの」などとも言いますが、この例えでいくと、名前が決まり(タイトルの話)、親もはっきりした(責任表示の話)ところまで進んできました。
そこで今回は、「いつどこで生まれたか」という問題を取り上げます。本の「本籍」である出版者・出版地、そして出版年月のお話です。
出版者は、実際の本ではたとえばこんな風に記載されています。
タイトル・ページ TRC
奥付 株式会社図書館流通センター
背 TRC
表紙 TRC図書館流通センター
実はNCR2018の適用を開始する際、出版者の記録はとても悩んだ部分です。
NCR2018では、出版者の情報源は下記のように規定されています。
#2.5.3.1.2 情報源
出版者は、次の優先順位で情報源を選定する。
a) 本タイトルと同一の情報源
b) 資料自体の他の情報源
c) 資料外の情報源
この規定に従えば、本タイトルの優先情報源であるタイトル・ページが、出版者の優先情報源になるケースが多くなるのですが、日本の出版慣行では出版者に関する記載は奥付の表示がもっとも詳しく正確である場合が多いのです。そこでTRCでは、検討の結果、和書の出版表示については奥付を優先情報源とすることにしました。
それでは次に、奥付にズームしてみましょう。
目録として採用すべき出版者・出版地・出版年月は、どこにどんな形で記述されているでしょうか?
NCR2018では出版表示の記録について、これまで蓄積された目録と整合性をとることを考慮して、別法(本則とは異なるがこの記録方法でもOK)、任意省略(記録を省略してもよい)、任意追加(追加してもよい)が数多く用意されていますので、さまざまな組み合わせの記録の仕方があり得ます。
以下ではTRC MARCで採用している規定をかいつまんでご紹介します。
★出版者
出版物の刊行に責任をもつ個人または団体のこと。「発行所」がこれにあたります。
目録に採用する際には、社名の前後に付されている法人組織を示す語などは省略します。(NCR2018 #2.5.3.2 記録の方法 任意省略2)
図書の表示:株式会社図書館流通センター → 図書館流通センター
★出版地
出版者が出版活動を行った住所もしくは所在地のこと。「発行所」の記述とセットで書かれている住所から、市町村名を採用します。
・「東京23区内」のとき...「東京」とのみ入力
東京
・「市」のとき...市名の「市」は省略(NCR2018 #2.5.1.2 記録の方法 任意省略1)。識別に必要でない場合は上位の地方自治体名は記録しない(NCR2018 #2.5.1.2 記録の方法 任意省略2)。
名古屋
武蔵野
・「町村」のとき......図書に表示がなくても町村名のうしろに都道府県を丸がっこに入れて記録 (NCR2018 #2.5.1.2 記録の方法 任意追加2)。
日の出町(東京都)
大潟村(秋田県)
★出版日付
基本的には「対象図書の属する版」が最初に刊行された出版年・月を入力します(NCR2018 #2.5.5.2 記録の方法 任意省略)。
図書には出版年が元号で書かれている場合でも、目録上は西暦に置き換えて記録します(NCR2018 #2.5.5.2 記録の方法)。
図書の表示:平成18年10月6日 → 2006.10
はっきり出版年と書いていないこともあります。そんな時は、発売年・著作権表示年などを採用。
また、そもそも奥付に表示がないこともあります。そんな時は、本文を参考にします。
c2007 (著作権表示年より。c...copyright 小さく「マルc」とあるものです)
2007あとがき (あとがきより。月は入力しません)
図書からはどうにもわからない時もあります。そんな時は出版者に問い合わせたり、やむを得ず諦めることもあります(昔の本は問い合わせも不可能なので)。
〔2007〕 (出版者に問い合わせた場合。月は入力せず、年のみ補記の形にします)
〔出版年不明〕
今回の内容を写真の例を使ってまとめますと、目録の記録は
出版者:図書館流通センター
出版地:東京
出版年:2006.10 となります。
おまけ情報 その1
奥付に書かれている年月日は、必ずしも発売日とは一致していません。かなり前倒しされているものも多いのです。データ部では毎年秋頃に「来年の日付の本がもう来たよ!」というのがニュースになったりもします。
おまけ情報 その2
出版者と関係が深いのがISBN。978-4-の後、次のハイフンまでの数字が、各出版者固有の数字です。ここを見れば、どこの出版者の本か一目瞭然。ISBNについて詳しくは「ISBN・数字の秘密」のブログ記事をどうぞ。