MARC MANIAX 典拠が久々に再開します。
今回の担当は田辺です。よろしくお願いします。
さて今回のお題は直接参照です。
そもそも耳慣れないこの言葉の意味は?どういうもの?と思われるのもごもっとも。こういった用語というのは、ピンと来ないものが多いと思います。
さて、直接参照そのものを説明するには、以前にお話した統一標目をもう一度思い出していただくとわかりやすいです。ここではまず日本人名を例にします。
日本目録規則(NCR)では
「著者は,典拠ファイルに定められた統一標目の形を用いる」(1987年改訂3版 23.2.0)
とあり、さらに
「人名は,原則として最初に目録記入を作成するとき,その資料に表示されている形を統一標目とする」(同 23.2.1.0)
おまけに
「原則として本人に固有の読みを表記する」(同 23.3.3.1(ア))
とあります。
言い換えると、
一番最初にある人物がMARCに現れたときに、統一標目の漢字とカナを決める。それ以降はどんな表示があってもどんな読みがあってもそれに統一する。
となるでしょうか。いったん決まったら、その人がMARC上に現れる時には必ずその形が入力されることになります。
そうなると、統一標目とは違う形で出たらどうなるのでしょう?実は責任表示にはNCRの記述の通則
「原則として,所定の情報源などにおける表示形のまま記録する」(同 1.1.5.2)
により、本に
Muro/Saisei
とあったら記述はそのままになります。
そして統一標目である
室生/犀星 ムロウ,サイセイ
が対で入力されます。
■ MARC上ではこんな感じになります。
251F1 Muro/Saisei
751B1 室生/犀星
751A1 ムロウ,サイセイ
ところでもしも
ある本にムロオ,サイセイと読みがあったらどうなるのでしょうか?
上の例を考えると
室生/犀星 ムロオ,サイセイ
と
室生/犀星 ムロウ,サイセイ
を対で入力するように思われるかも知れませんが、いえいえこれが。
室生/犀星 ムロウ,サイセイ
しか入力しないのです。
それではムロオサイセイはどうなるのか?その本を見た人にとっては、室生犀星はムロオサイセイなのに?
そこでお助けアイテムとして登場するのが直接参照です。
統一標目にはならなかった別の読みかたを、MARCではなく典拠ファイルに入れておく、というやり方です。
室生/犀星は、ムロオ,サイセイではなく
ムロウ,サイセイを見てくださいというのが、
室生/犀星 ムロオ,サイセイ は
室生/犀星 ムロウ,サイセイ の
直接参照
という言い方になります。
そして典拠ファイルではこのように表示されます。
11000098675-0000 室生/犀星 ムロウ,サイセイ
11000098675-4001 室生/犀星 ムロオ,サイセイ
15桁の典拠IDのうち、12~15桁を形態番号といい、4000番台は直接参照であることを示しています。(ここではわかりやすくするために典拠IDに-を入れてあります。)
こうすることでムロオサイセイで検索しても、ムロウサイセイの本が検索できるというわけです。
こんな風に表示されることもあります。
室生/犀星 ムロウ,サイセイ
←室生/犀星 ムロオ,サイセイ
逆から見ると
室生/犀星 ムロオ,サイセイ
→室生/犀星 ムロウ,サイセイ
となりますね。
典拠ファイルの4000番台は、MARC上には決して現れないもの。
お助けアイテム直接参照は、裏からMARCを支えているのでした。