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別名のある人の探し方 ~典拠のはなし~

江戸時代以前の人や明治時代の文筆家は
複数の名前を日常的に使い分けていたようです。

少し前にこのような図書が典拠班に来ました。

百千鳥狂歌合

喜多川歌麿 (筆)
芸艸堂(2012.10)

江戸時代に書かれた本の復刻版のようです。
(このシリーズ、和綴じの豆本サイズでなんだか
つい気になって手に取りたくなってしまいます。)
この本の責任表示は2人。
筆 喜多川/歌麿
撰 赤松/金鶏
喜多川歌麿は絵師としてよく名が知られていますが
(とは言え1代目や2代目といった世系の違う
同名の落とし穴もあるので要注意です)、
撰者の赤松金鶏は...?
図書に著者紹介があってしめたと思いましたが、
別名に関する詳しい記載はなし。

江戸時代の人ですから、特に図書の隅々にまで目を通します。
標題紙や奥付などの情報源はもちろん、巻頭や解題、
出典一覧や雅号一覧などもあれば念入りにチェック。
名称に関する情報を集めてから参考資料にあたります。
今回は、赤松金鶏の名では資料の項目に見当たりませんでしたが、
「国書人名辞典」(岩波書店 1993年刊)の畑金鶏の項目中に
別名:赤松氏、号:奇々羅金鶏
などの記載がありました。
また「日本古典籍総合目録データベース」(国文学研究資料館)でも
畑金鶏の別称として赤松金鶏の名前が。

諸々の調査を終えて集まった情報を元に別名などを組合わせて
もう一度検索してみると、累積の人名典拠ファイルにそれらしき人物、
11000385706-0000 畑/道雲
がありました。

畑道雲のファイル内容と資料からどうやら同一人物と確定してよさそうです。安心して

畑/道雲 ハタ,ドウウン
   ←赤松/金鶏(記述形)
   ←畑/金鶏 (参照形)

とファイルを作成しました。
これで次回からは別名で出てきてもすぐにわかるようになりました。

今回のようにその名称で資料に項目がなくても
ほかの名称の項目中に別称として
表記されていることは多々あります。
異なった名称が資料調査の過程で新たにわかれば
最初に見ていた資料に戻って再度調べたりすることも。
また複数の資料にそれぞれ異なる形で記載されている場合もあります。
ちなみにこの家系、息子が銀鶏、孫が鉄鶏と名乗っています。
銅ではなく鉄なのですね。

このような工程を踏んで今まで作成した典拠ファイルの中に
別の名前で既にあった!ということがわかったとき、
何ともいえないちょっとした爽快さを味わえるのでした。

古典の人物は時とともにだんだん網羅されていくので
新たな人物として典拠ファイルを作成することは少なくなるのかなと
以前はなんとなく思っていたのですが、先日は川崎尚之助なる人物が。
2013年の大河ドラマ「八重の桜」の主人公、
新島八重(典拠ファイルでは新島八重子)の最初の旦那さんです。
これまであまり世に知られていなかった人物がこうして明るみに出て
名や人となりが知られるのはロマンを感じますね。

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