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お孫さんですか?(和装本の責任表示(3))~ASで作成するデータについて~

こんにちは。データ部AS・伊藤です。主に和装本を担当しています。

和漢古書でややこしいことになる字として前回「同」の字のことを書きましたが、責任表示のところで注意が必要な字をもうひとつあげてみたいと思います。

和書でも漢籍でもよくあるのですが、著者の親類縁者が副次的にその著作に関与しているとき、姓を書かずに著者との続柄のみを書いていることがあります。たとえば、『孫子國字解』という図書では、巻頭の表示は「物茂卿著 男道濟校」となっています。物茂卿(ぶつもけい)=荻生徂徠(おぎゅう・そらい)の著作で、息子―実際は養子―の道濟(どうさい)=荻生金谷(おぎゅう・きんこく)が校訂したものです(「男」「女」は「長男」「長女」というように、一文字で「むすこ」「むすめ」を意味します)。
直系ではなく、弟やら甥やらがかかわっている場合も多々あり、しばしば「弟~」「甥~」となっています。ちょっと注意が必要なのは「姪」で、これは現代日本では「兄弟姉妹のむすめ」の意味ですが、和漢籍の責任表示のところでお目にかかる場合はおおむね「姉妹のむすこ」を表す字です(「兄弟のむすこ」が「甥」。「めい」は「甥女」「姪女」と表記されます)。

さて、このように続柄のみが書かれている場合、目録の責任表示のところでは姓・名のかたちに直す、または補記するか(ちなみに、漢籍の冊子目録では現物の表記にかかわりなく本姓名を記録するのが原則になっています)、転記するにしても姓・名のかたちの統一形を立てる必要があります。ただ転記しただけでは、それが続柄であるということを理解しているのか疑われてしまいます。
まあ、「子」「男」「女」「弟」「甥」「姪(侄)」などであれば、そんな姓の中国人も日本人もまずいませんから、ああこれは著者との続柄だなとすぐわかって紛れることはないのですが・・・「孫」さんはどっさりいます! ということで、図書に「孫~」とあったら、それが著者のお孫さんなのか、それとも血縁関係のない孫なにがしさんなのか、ちゃんと判断しなければならないのでした。

もっとも、「孫」さんの著作で、そのお孫さんが校訂したというとき、現物に「孫某校」とあったら・・・うん、頭を悩ますのは意味無さそうですね。

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