典拠ファイルとひとくちに言えども、色々なファイルがあります。
以下は個人名(著者や被伝者)典拠ファイルに関するおはなしです。
2021年、今年も早折返し。
上半期を振り返るとすでに様々な典拠ファイルを作成したなと感じます。
自分のなかで印象に残っているもののひとつに、中世イタリアの芸術分野の評論を収めた本があり、各評論ごとに著者も多数出現、ひとりずつ資料調査をしたり統一形に頭を悩ませたりと典拠しごたえがありました。
こんなときの典拠作業中はついその時代にタイムトリップしたような気持ちになります。
1冊の本に対する著者の典拠作成に比べて、内容細目での典拠作成では、1冊のなかに著者が何人も出現することも多いです。
さらには図書に著者紹介がない、あっても情報が少ない、カナヨミがない、西洋人の原綴が記載されていない...ということがそれなりにあります。(前述の本には幸いありましたが。)
西洋人の典拠ファイルの統一形は、原綴+カタカナで構成されています。ではカナヨミやアルファベット綴り(原綴)がないときはどうするか?
ヨミは参考資料などを調べて入力しています。ヨミがわからないときは辞典類を頼りに読みを推定して付与します。
原綴がない場合は、同じく参考資料や、VIAF(バーチャル国際典拠ファイル)、著者のHPや所属する機関のHPなどを調査します。
それでも調査の甲斐も空しくはっきりしないケースもまれにあり、ヨミのように推定で付与とはいきませんので、その場合は泣く泣く原綴不明として作成します。うーん、くやしい。
しかし、刊行当時は原綴不明として作成したファイルも、時を経て綴りが判明するケースもあります。特に、まだインターネットも十分に浸透していない時代に作成した古い典拠ファイルなどは、いま再調査するとわかることが多いです。
国内では初出の一冊しか刊行されていなかったり、ちょっとクセのある翻訳のされかたから、同定作業は困難を極めることもありますが、「レウイス?あ、Lewis(ルイス)か!」などと資料を突き合わせて地道に探っていき、晴れて綴りが判明したときは、ファイルをメンテナンスして原綴を記録しています。
20~30年前に、原綴不明扱いで作成していた典拠ファイルはここ数年で細々とメンテナンスし、2000件以上のファイルに原綴を追加しました。(こんなにあったのですね!)
図書1冊1冊に対して作成するMARCが、1件で完結するのとは異なり、典拠ファイルは標目のもとに統制され、情報が蓄積されてこそ、効果が発揮されるデータベース。
著者のデータベースとしてずっと使っていただくものなので、メンテナンス作業は欠かせません。
一度ファイルを作成したあとも、日頃から見張り続けています。