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「折帖」補論(2)―国文学研究資料館『和書のさまざま』の説明

こんにちは。AS 伊藤です。主に和漢古書を担当しています。

「折帖」と呼ばれるものについて、前回『日本古典籍書誌学辞典』および『日本古典書誌学総説』の説明を見てきましたが、これに対し、以下のように、やや異なった説明がされていることもあります。

国文学研究資料館編『和書のさまざま』(和泉書院2015)では、「折帖仕立」として「谷折りにした料紙を重ね、一方の端裏(はしうら)ともう一方の端裏どうしを糊付けして継いだ本。折本とは料紙の貼り合わせ方が異なります。裏面(糊付け部分のある方)は使用できません。」(p4)という説明があり、寛政7年刊の『集古帖』という縦長の法帖の写真が実例として掲載されています。すなわち、『辞典』の「片面折帖仕立て」に該当するということになります。
つづけて、「画帖装」があげられていますが、こちらの説明は「折帖仕立と同様の作りで、その背を表紙で覆った本(ですから、折帖仕立てのように何丁にもわたって展開することができません)。絵を見開きで鑑賞するのに向き、江戸時代後期に普及しました。絵を伴った版本に多く見られます。」というもので、表紙と裏表紙をつなげて背を覆っていることをその要件としています。
実例としてあげられているのは、「折帖仕立と同様の作り」とあるとおり、「片面折帖仕立て」と同様に谷折りにした紙の端裏どうしを糊付けしていって、表紙と裏表紙をつなげた『潮干のつと』という絵本です。たしかにこのような装丁のものは江戸後期から明治にかけての絵本・図集などで時々見るのですが、図版ではない図書もあります。できあがった形態としては、折本の背を表紙で覆った「旋風葉」とすこし似ていますが、前回見たように、料紙の貼り合わせ方が異なるとして折本と折帖とを区別するならば、やはり「旋風葉」とは区別しなければならないでしょう。

この『和書のさまざま』では、『辞典』の「両面折帖仕立て」にあたるものの説明はありません。ただ、この書籍のもとになった国文学研究資料館のWebサイトに搭載されている「ヴァーチャル展示 和書のさまざま ~書誌学入門~」(最終更新2002年7月)というページでは、「第一部 本をかたちづくるもの I 装訂」の「折本」の項目には「帖装本ともいい、横に長くつなぎ合わせた紙を一定の幅で折り畳み、前後に表紙をつけたもの。経典や習字手本などに多く用いられる。また古筆鑑や画帖などの折帖仕立て(画帖仕立て)も折本の一つ」という説明があり、ここで例として「集古帖(寛政七年刊)」と「奈良絵豆扇面絵」の画像があげられています。前者は上記の和泉書院刊の『和書のさまざま』に掲載されていた「片面折帖仕立て」の法帖そのものですが、後者は『辞典』の「両面折帖仕立て」にあたる貼り込み帖です。
なぜ和泉書院刊の『和書のさまざま』において、「奈良絵豆扇面絵」の例が掲載されなかったのか、経緯はわかりません。ただ、「経典や習字手本」の例である「集古帖」につづけて、「肉筆の古筆鑑や画帖などの折帖仕立て(画帖仕立て)」の例に相当するこの画像を掲載すると、『和書のさまざま』では、「版本に多く見られる」ものとして「画帖装」という装丁を別にあげているわけなので、混乱を招くだろうということがあったのかもしれません。この「画帖装」という名称については、後ほど改めて考察したいと思います。

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