こんにちは。
典拠 小松です。
典拠ファイルの機能についてはこれまで、いろいろな説明をしてきました。(例えばこちら)
・異なる形で書かれていても一つの統一標目にまとめる
・同じ形で書かれていても、異なる人物なら別人として扱う
というものです。
この典拠ファイルの機能によって、新字旧字の違いや、西洋人の日本語表記の違いに影響されずに、同一の著者の著作をまとめることができたり、多くの同姓同名の人物の中からお目当ての著者とその著作を探しだしたりすることができます。
典拠ファイルの存在意義そのものですから、新規で作成する典拠ファイルと、既出のファイルの比較同定はとても大事な作業。新しく典拠ファイルを作成する際に一番最初にすることは、同名の典拠ファイルの有無を調べること。そして、もし同名の人物の典拠ファイルがあれば、同一人か別人かをよくよく確認することです。
更に、ほぼ典拠ファイルの形が出来上がった時点で、入力中の典拠ファイルの人物と、同姓同名の既出の人物が間違いなく別人か、再度確認します。この確認の作業、うっかりしていると、どんどん時間が過ぎていきます。
「同姓同名の2人が同一人であることを証明する」
「同姓同名の2人が別人であることを証明する」
意外にもなかなかの難問です...。ずらっと並んだ同姓同名を前に
「既出の人は商学部の助教授とあるけれども、今回の人は同じ大学の文学部の教授...。大丈夫だろうか、専門は?」
「今回の人はコンピューターグラフィックだけれど、既出の同姓同名にイラストレーターやWebデザイン関係の人がいる。もしかして」
挙句の果てに
「職業違い...まさか司会業と保育園園長のかけもちは...。ないと思ったけれど」
「お坊さんが株の本を書いてる、なんてことあるかしら?」
著者の人生の紆余曲折にまで思いを馳せそうになってしまいます。
(いやいや、そこに時間をかけてるわけではありませんよ)
さてさて、典拠ファイル作成時の調査の結果、同一人と判明すれば、めでたく既出の典拠ファイルに紐付け(リンク)します。
では、別人と判明した場合は?
漢字形とカタカナ形が同一の典拠ファイルを作成する際、私たちは2つ目の典拠ファイルには、名前に加えて、生没年・職業・専門分野・世系などを付けて1つ目と区別をします。この区別のために付ける言葉を「付記」と呼びます。
付記には優先順位があり、生年が公開されていれば、生年を優先して付記を採用します。付記として採用するために出版者に問い合わせをすることもあります。それほど生年を付記しようとするのはなぜかというと、専門分野や執筆ジャンルが変化したり、複数あるケースがあるのに対して、生まれた年は変化することがないからです。
しかし、時には同じ年生まれの同じ名前の著者が複数出ることも。そんな時には生年と専門などの単語を2つ重ねることになります。たとえば、今典拠ファイルで最多の同姓同名を誇る(2016.7現在34名)田中実さんであれば
田中/実(1950~ 医師)
田中/実(1950~ 分子生物学)
田中/実(1950~)
1950年生まれの田中実さんが、3人それぞれに著書を刊行されています。
「実」というのは、戦後の名前の流行によるものでしょう。お三方それぞれ専門分野がはっきりしていたので、適切な専門付記を付与して事なきを得ました。
付記のように典拠ファイルの形で皆さまの目に触れるもの以外にも、特に同姓同名の多い名前については、経歴、執筆ジャンルなどを手元に蓄えて、今後の同名異人(異名同人)の出現に備えています。
同姓同名、たとえ同年生まれであろうとも、何人かかってきても大丈夫です。
大丈夫...ではありますが、もし差し支えなければ、著作に生年を記載していただけるとたいへん助かります。はい。