中学校の新学習指導要領で「聖徳太子」を「厩戸王(うまやどのおう)」に変更すると公表されていましたが、3月末の告示で学校現場に混乱を招くとして現行の「聖徳太子」の表記に戻すことが決まりました。
歴史で習う著名人に2つ呼び名があったら生徒が混乱するという趣旨で表記を戻すようですね。習う生徒も混乱するかもしれませんが、テストを採点する先生も大変です。「聖徳太子」「厩戸皇子」「厩戸王子」、はては「豊聡耳皇子」...。どこまでが正解になるんでしょう。
さて、教科書ならずとも、こうした異名同人には混乱がつきものです。
聖徳太子を例とすると、
聖徳太子著「法華義疏」
上宮王著「法華義疏」
と2冊の本があるとします。
ちょっと見には、タイトルは同じだけれど著者が異なる別の本のように見えます。しかし、上記のケースは「上宮王」というのは聖徳太子の別名なので、実は中身はほぼ同じ本でしょう。
ですが、書棚で聖徳太子の「法華義疏」を捜している人の目の前に、上宮王の「法華義疏」があっても、捜している人に「聖徳太子=上宮王」という知識がなければ、手に取ることはないかもしれませんね。
そこで、典拠ファイルの登場です。
データベースで検索する際には、上のような事態を避けるための工夫がされています。
それが著者の名称を「統一標目のもとにまとめる」こと。
TRC MARCが準拠している「日本目録規則1987年版 改訂3版」(NCR)にはこうあります。
「23.2.1.1 著名な、あるいは著作の多い著者については、統一標目はつぎの優先順位による。」
ア)参考資料等において多く用いられている形
イ)多くの著作で一致している形
聖徳太子のような歴史上の人物もこのルールに則ります。著者に対し「統一標目」を決め、図書にあらわれるそれ以外の表記を「記述形」とします。統一標目は名前が表すように必ず「1つだけ」そして記述形はいくらあってもよろしいのです。
例えば、TRCの聖徳太子の典拠ファイルは次のようになっています。
11000051120-0000 聖徳太子
11000051120-0001 皇太子仏子勝鬘
11000051120-0002 上宮太子
11000051120-0003 上宮皇
11000051120-0004 上宮王
統一標目と記述形というシステムがあることによって、統一標目と異なる責任表示であっった場合も統一標目がMARCに入力されます。それによって「聖徳太子」という検索で、図書に「皇太子仏子勝鬘」や「上宮太子」という責任表示しかない図書もヒットさせることができます。
さらに、典拠ファイルを通して検索すれば、統一標目を知らなくても「上宮王」という著者を検索することで「上宮王」の責任表示がある図書を含む、聖徳太子の全著作を検索することができます。
聖徳太子に限らず歴史上の人物は別名が多いものですが、この統一標目と記述形というシステムを利用すれば、多種多様な別称を総当たりで検索しなくても、全ての著作を網羅することができます。
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ちなみに聖徳太子を改めて調査したところ、TRCで使用している参考資料類は、のきなみ「聖徳太子」で記載されていました。今、改めて典拠ファイルを作成するとしても統一標目は「聖徳太子」で決まりです。
私自身はといえば、少女時代に山岸涼子の『日出処の天子』を愛読していました。そんな理由で「厩戸王子」が「私の統一形」。そんな人がデータ部には他にもいるみたいですね。