先日、アメリカの女性詩人を描いた映画
「静かなる情熱 エミリ・ディキンスン」を観てきました。
エミリ・ディキンスン
(Emily Dickinson 1830~1886)。
生前には10篇ほどしか発表されず、
没後1800篇近くの詩が見つかったこと。
その詩が今や多くの人に影響を与えていること。
後半生は白いドレスに身をつつみ、
ほとんど屋敷から出ることがなく、
家族以外の人との交渉を拒んで過ごしていたこと。
謎も多いこの詩人を、女優シンシア・ニクソンが
見事に演じていました。
今回の典拠のはなしでは、
このエミリ・ディキンスンが活躍した19世紀ごろの
著名な西洋人を調査するために使っている資料をご紹介します。
こちらの記事では明治期以前に活躍した日本人の資料を
ご紹介しました。
さて、西洋人はどんな資料をみていくのでしょうか-
歴史上の人物や著名な人は、
参考資料に多く用いられている形を統一形としています。
第一に見る資料は、日本人の調査の場合と同様
「人物レファレンス事典」(日外アソシエーツ)。
それ以外にも、統一形を決めるために参考にしている
人名辞典があります。
19世紀ごろに活躍した西洋人について調べるときは
コンサイス外国人名事典(三省堂)
岩波西洋人名辞典(岩波書店)
岩波世界人名辞典(岩波書店)
平凡社大百科事典(平凡社)
広く網羅しているのはこの4冊。
エミリ・ディキンスンのように文学関係の人の場合は
新潮世界文学辞典(新潮社)
集英社世界文学大事典(集英社)
も照会します。
西洋人の調査では、こちらもよく使用します。
キリスト教人名辞典(日本基督教団出版局)
西洋人名を人名辞典で調査する際に注意すべきは、
翻訳の仕方が辞典によって異なることです。
見出しは日本語で書かれるのが一般的。
ですが、翻訳のしかたに、
それぞれの個性がでることもあります。
たとえば 先ほどより例にあげているエミリ・ディキンスン。
映画の邦題では「エミリ・ディキンスン」とされていましたが
「平凡社大百科事典」の見出しは「ディッキンソン」、
「コンサイス外国人名事典」「岩波西洋人名辞典」
「岩波世界人名辞典」「新潮世界文学辞典」
「集英社世界文学大事典」では「ディキンソン」。
「新潮世界文学辞典」「集英社世界文学大事典」の凡例には
英語の語尾にある「~SON」は「ソン」と訳し
「スン」とはしない旨明記されています。
各社、編集方針があるのですね。
語尾の部分が違うのであればまだしも、
先頭部分の翻訳が違う場合、掲載されているのに
探せなかったという事態が起こる恐れも。
かといって翻訳されるであろうパターンを
想定しながら探すのは大変です。
こんなとき力を発揮するのが、索引。
外国人名を掲載内容に含む人名辞典には
原綴索引が必ずあります。
こちらを使えば翻訳のしかたに左右されずに、
掲載されている人名を探し当てることができます。
西洋人名の調査の時は原綴索引を必ず見る。
これが典拠のチームのお約束ごとです。