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2020年12月21日

和漢古書あれこれ ― 字書

こんにちは。AS 伊藤です。主に和漢古書を担当しています。

前回紹介した『爾雅』などは、字義によって分類した漢字の辞書ですが、漢籍の小學の書としては、このほかに、字形によって分類した「字書」と字音によって分類した「韻書」とがあります。
前者の代表格としては、以前にも紹介したことのある『説文解字(せつもんかいじ)』という書物があげられます。これは後漢の許慎(きょ・しん)の撰で、9353の漢字を、象形・指事・会意・形声・転注・仮借の「六書(りくしょ)」の原理によって、540部に分類して説明をほどこしたもので、漢字研究の最も基本的な文献になります。注釈書等も多く、「經部・小學類」のなかで「説文之屬」という、独立した属が設けられています。
この書物はもともとは15篇から成っていましたが、宋代に徐鉉(じょ・げん)という人が校訂して30巻としました。清代には段玉栽(だん・ぎょくさい)による詳細浩瀚な『説文解字注』(段注)が著され、漢籍整理の現場でよく見るのは、これに『部目分韵』『六書音均表』『説文通檢』『説文解字注匡謬』の4種を附刻したものです。
このほかにも、徐鉉の弟の徐鍇(じょ・かい)による『説文繋傳(せつもんけいでん)』40巻や清の朱駿聲(しゅ・しゅんせい)による『説文通訓定聲(せつもんつうくんていせい)』18巻などもしばしば目にします。

『説文』以外の字書は「各體字書之屬」に収められており、著名なものとしては『急就篇(きゅうしゅうへん)』『玉篇(ぎょくへん)』『大廣益會玉篇(だいこうえきかいぎょくへん)』『字彙(じい)』『正字通(せいじつう)』といったものがあります。このうち、『大廣益會玉篇』は、梁の顧野王(こ・やおう)原撰の『玉篇』を宋代に勅命を受けて改修したものですが、ワカチとしては「だいこう/えきかい/ぎょくへん」ではなく、「だいこうえき/かいぎょくへん」とすべきかと思います(「會」は「あわせる」「あつめる」の意)。

これらの字書類の集大成に位置づけられるのが、清朝の康熙帝の命で編纂された『康煕字典(こうきじてん)』です。これは47035もの漢字を214部に分けて配列したもので、現在の漢和辞典も基本的にほとんどみなこの部立てを踏襲しています。構成は、子集から亥集までの十二支名による12集をそれぞれ上中下に分かち、巻頭に等韻・總目・檢字・辨似を、巻末に備考・補遺を加えた合計42巻から成ります。
漢籍目録にはしばしば「康煕55年敕撰」と著録されていますが、実際の編纂者は巻頭の「職名」に列記されています。以前書いたように、通常こうした場合は、先頭の大臣などは名義のみと見なして採用しないことが多いのですが、『康熙字典』の場合は、筆頭の纂修者の「凌紹雯」ではなく、「總閲官」として先頭にあげられている2名のほうを採用して、「張玉書,陳廷敬〔等奉敕撰〕」とするほうが多数派のようです。
『康煕字典』は明治期にかけて和刻本も多数刊行されていますが、よく目にする江戸時代のものとしては、安永9年(1780)刊の、都賀庭鐘(つが・ていしょう)父子による『字典琢屑』『字典初學索引』を附した刊本があります。

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