版を重ねても大丈夫 ~典拠のはなし~
先日美術展「トワイライト、新版画展」へ行ってきました。
今年初め頃に刊行された図書で目にした、川瀬巴水の作品の構図が今みても斬新で気になっていたので、「小林清親から川瀬巴水まで」という副題にひかれて足を運びました。
西洋絵画の美術展にはときどき行きますが、そういえば版画の展示をじっくり見るのははじめてかも、と作品リストには作者のほかに版元の記載もひとつひとつにあって興味深かったです。江戸の浮世絵だけでなく明治時代にも版元が活躍していたのですね。
解説内など号のみで書かれることも多く、「広重」と出てくれば安藤広重だなとわかりますが、「探景」と言われるとさっき作品を見たどの人だっけ...あ、そうそう安治...井上安治だ、と浮世絵に明るくない自分はなります。
典拠ファイルを調べると「井上/安治(イノウエ,ヤスジ)」で優先名称(統一形)が作成されています。個人名典拠を作成する際に参照する参考資料も、多くがこの形で掲載されていました。資料によっては「井上/安治(イノウエ,ヤスハル)」と記されることもあるようです。そういえば作品のなかにも「安はる」という表記も見かけたような?
典拠ファイルは図書に表記された形は記述形として、優先名称(統一形)のもとにまとめて管理します。今後「井上探景」や「井上安はる」と書かれた図書が出たときは「井上安治」を見出しとしてその引き出しにまとめていくというイメージです。
ほかの例も見てみましょう。
浮世絵師といえば、の葛飾北斎の典拠ファイルはこのようになっています。(一部省略しています)
統一形:葛飾/北斎(カツシカ,ホクサイ)
記述形:北斎(ホクサイ)
記述形:葛飾/戴斗(カツシカ,タイト)
参照形:勝川/春朗(カツカワ,シュンロウ)
参照形:俵屋/宗理(タワラヤ,ソウリ)
多くの号があり、図書に表記された形が記述形として「葛飾/北斎」のもとにまとめられています。
また、図書に責任表示として書かれていないけれど図書中や資料に記載があった形は、ガイド機能として参照形を作成しています。典拠ファイルを使えば参照形の形でも検索することができます。
ただし、ひとつの引き出しにまとめる典拠の方法は近代以前の人の場合。現代の人は別名がある場合はそれぞれの名称を優先名称(統一形)として作成し、互いに関連します。
さらに、「安藤広重」についての典拠ファイルを見てみると...3件のファイルがあります。
統一形:安藤/広重 付記:1代目
統一形:安藤/広重 付記:2代目
統一形:安藤/広重 付記:3代目
これまでは異名同人(別表記を持つ人)の例を見てきましたが、安藤広重は同名異人の例です。典拠ファイルでは同名の別人がいる場合は優先名称(統一形)に世系を付与(付記)して区別しています。
「安藤広重」という文字列だけで検索しようとすると、3人の広重が混ざってしまいますが、典拠ファイルを使うと明治期に活躍した3代目について調べたい、というときもピンポイントで探すことができます。