匿名と聞いて、みなさんは何を思い浮かべますか?
わたしはラジオ番組のリスナー葉書を想像してしまいます。
最近のインターネットでは匿名やハンドルネームがスタンダードで、某SNSのように本名を名乗るのが「あたらしい」という風潮になりましたが、図書は匿名の風潮から比較的遠いように思います。著者が匿名だったら、読者は著者で本を選ぶことができないし、著者にとっても自分の著作を選んで読んでもらえないのはマイナスですものね。
著者の傾向としては、いわゆるペンネームや筆名でも他と区別できるように、経歴を明らかにして周知された名前を使い続ける(場合によっては栗本薫=中島梓のように使い分けることも)ことが多いのですが、たまに経歴を伏せて匿名を使う著者があります。
先日気になったのが、この本、
「ザ・シークレット・フットボーラー すべて話そう、プレミアリーグの真実について」
著者は「ザ・シークレット・フットボーラー」、プレミアリーグで活躍したサッカー選手が匿名でサッカー界の内幕を語っています。図書の解説によると、この「秘密のサッカー選手」の正体に関してネット上などでさまざまな憶測が飛んでいるものの未だ特定はされていないのだとか。熱狂的なファンが多いサッカーのこと、すぐにわかりそうなものですけれども。
匿名とわかった著者の場合、わたしたちは既出の著者の変名ではないかと疑って調査をします。もし変名とどこかに公表しているならば相互参照(相互参照って何?という方はこちらをご覧ください)にすることもあります。この作業についてはこちらをご覧いただくと想像していただけると思います。
こうした調査のために日々典拠では、図書や参考資料で別の表記や別名を集積しています。
例えば、佐藤A子さん名義の図書に「鈴木B子としても活動」というようにあった時、その時点で鈴木B子で書かれた著書がなくても、今後出てくる可能性を見据えて鈴木B子名義があるという情報を社内で記録しておきます。すると、次回鈴木B子名義の図書が出版された時に、図書に佐藤A子と書いていなくても、生年や経歴、もろもろを考慮して同じ人物と特定できる可能性があります。著名な人物であれば各種人名辞典はもちろん参照しますし、外国人ならばアメリカの議会図書館(LC)など海外の情報も参考にします。
最近ではこんな本もありました。
「骨の祭壇 上」
(新潮文庫)
新潮社のHPによると
「ダン・ブラウン? ハーラン・コーベン? S・キング? 「ノーベル賞候補者」とも囁かれる正体不明の作家の会心作!」
著者のフィリップ・カーターは
「国際的に活躍するある作家の変名だということしかわかっていない。男性か女性かも不明。」
とのこと。
ちょっとワクワクしませんか?海外の小説が好きな人にとっては正体を憶測しながら読むのも楽しみ方のひとつでしょう。
ところが、調査の結果、わかってしまったのです。
正体はどうぞ典拠ファイルでご確認ください。