今日も人名典拠の話です。
いままで、日本人の著者の例ばかりをご紹介してきましたので、
そろそろ下記のような疑問をいだく方もいるのでは。
「外国人の人名典拠ファイルってどうなっているの?」
当然、日本以外の国の人が出てきても人名典拠ファイルを作ります!
便宜的に、日本以外の国の人のうち、中国・韓国など漢字圏の国の人を「東洋人」、それ以外の人をまとめて「西洋人」と分けています。
違いはなんでしょう?
カンタンにいいますと
「東洋人」の見出し(統一標目)は日本人のファイルと同様に漢字を採用
「西洋人」の見出し(統一標目)はアルファベット形を採用
ということです。
それぞれ典拠例をあげてみます。
まずは東洋人。
東洋人ファイルの特徴は、母国語読みと日本語読みが付与されるケースがあるということ。
東洋人の母国語読みはむずかしく、母国語読みだけでは、カナヨミでの検索ができないこともあります。そのため、著者表示が漢字で、統一形のカナヨミが母国語読みの場合に限り、MARC上に母国語読みと日本語統一読みを両方入力しています。
莫言の例で言うと、以下の2つが対となってTRC MARCに付与されています。
統一形 莫言(モーイエン) 母国語ヨミ
記述形 ← 莫言(バクゲン) 日本語ヨミ
MARC上ではこんな風に現れます。
例(MRAC No. 11026164抜粋)
TRC MARC № 080$A01 11026164
タイトル 251$A01 蛙鳴
タイトルヨミ 551$A01 1 アメイ
著者 251$F01 莫言//著
251$Z01 11000077816-0002
著者ヨミ 751$A01 1 モーイエン = 統一形の母国語ヨミ
751$B01 莫言
751$Y01 バクゲン = 日本語ヨミ
751$N01 11000077816-0000
これによって、漢字でどう書くか思い出せない、母国語読みがわからない...という状況でも、日本語読みから検索することが可能になるのです。
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次は西洋人。
特徴としては、翻訳の違いや発行された年代によって、責任表示が多様な形なので、さまざまな記述形が作られることが多いです。
SF作家ジュール・ヴェルヌを例にしてみましょう。
〔典拠一覧(抜粋)〕
漢字形 カナ形
統一形 Verne,Jules ヴェルヌ,ジュール
記述形 ←J.ベルヌ
記述形 ←シユル、ウエルス
記述形 ←シュル・ウェルス
記述形 ←ジェール・ベルヌ
記述形 ←ジュール=ヴェルヌ
記述形 ←ヂールス、ベル子 ジールス/ベルネ
記述形 ←ベルヌ
記述形 ←ヴルヌ
記述形 ←Jules Verne
記述形 ←ヂュール・ベル子 ジュール/ベルネ
記述形 ←ジユウールスヴエルヌ
記述形 ←ピユールヴヱルーヌ ピユール/ヴエルーヌ
みてください、この記述形バリエーション!
図書によってまったくちがうイメージの名前で出てくる表記を、吉本ばなな←よしもとばなな方式と同じやり方(前記事・参照)でつなげています。
そのとき、同じ人が別人扱いにならないよう、すでにファイルができていないかしっかり検索をすることが、とても重要。
きちんと統一形のもとにまとめることで、「ヂュール・ベル子」とか「ピユールヴヱルーヌ」なんて、一見ヴェルヌ作品とは思えないような表記の本も、ヴェルヌの著作として検索できるようになります。
ちなみに上記のジュール・ヴェルヌの記述形は一部省略したもの。現在の記述形は全部で27通り!です。
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同姓同名①「マイケル・ジャクソンは「世界ビール大全」を書いたか?」
同姓同名②「西洋人の場合」
(2007年3月19日の記事より)