こんにちは、典拠の森田です。
以前のブログで姓をもたない名前についてご紹介しましたが、今回はその続きです。
前回は国の慣習として姓を持たないため作成した典拠ファイルも姓名の形としない、というケースでしたが、実は他にも名前が姓名の形として取り扱われないケースがあります。
たとえばこの人
Peter Tieryas ピーター・トライアス
一見ごく普通の西洋人の典拠ファイルのようですが、良く見ると姓名の形になっていません(通常西洋人の典拠ファイルは姓,名というように間に姓名の区切りを意味するカンマが挟まります)(詳しくはこちら①、②)。Tieryasが姓のように見えるため不思議に思われる方も多いでしょうが、なぜこのように採用されるのか。そのわけはこの著者の典拠ファイルの中にあります。当該典拠ファイルの職業・専門等の項目を見てみると、
別名:Liu,Peter Tieryas
とあります。つまり、この著者にはLiuという姓がつく形の名義と、上記のPeter Tieryasという二語で構成される名義の二つがあることがわかります。TRCでは、日本目録規則1987年版 改訂3版に準拠し、典拠ファイルの統一標目は初めてMARCを作った図書に書かれている形を採用するとしています。
(統一標目に関してはこちらに詳しくあります)
この著者の初出の図書の名義は「ピーター・トライアス」という二語構成のものでした。が、別名で姓が判明しているため、典拠ファイル作成当時この名義は名のみで構成されるペンネームであると判断し、姓名扱いとはしませんでした。そのため、ファイルの形もTieryas,Peterと順序が逆にならずPeter Tieryasのままとなります。
単純に見えて意外と悩ましい姓名の問題。おそらく今後も尽きることはないでしょう。