典拠・望月です。
わたしの趣味のひとつにお芝居を観ることがあります。今年は、どういうめぐりあわせかロシアを舞台にしたお芝居を観る機会が多くありました。小説「罪と罰」の舞台化作品から、チェーホフ関連2作品(これからのも入れると3つ)、日本人作家が書いたソ連時代の天才建築家のお話まで。こういうこともなかなか無いです。
演劇に限らず、ロシアの人が出てくる物語でよく問題になる(というか、引っかかって先に読み進められなくなる)のが、名前のこと。今日は、ロシアの人のおなまえについて典拠班的豆知識をご紹介します。
まず、愛称問題。
ロシアでは親しい間柄では本名ではなく愛称で呼ばれるそうです。同じ人なのに呼ばれ方がちがうのですね。いくつか例をあげてみます。
オリガ→オーリャ
コンスタンチン→コースチャ
イワン→ワーニャ
アレキサンドル→サーシャ
左が本名、右が愛称。
これを知らないと、観ていて(読んでいて)相当混乱します。
ただし、呼び方なので、著者の名前としては使われることはなさそうです(あくまで推測ですが)
次に、父称問題。
簡単に書きますと、ロシアの人の一般的な名前は3つの単語から構成されます。
本人の名前+父称+姓
父称というのは父親の名前を一定の法則で変化させたものです。これは省略されたり、イニシャルで書かれたりする可能性があります。
チェーホフを例としてあげてみます。
アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ
本人の名 父称 姓
統一形
Chekhov,Anton Pavlovich
チェーホフ,アントン・パーヴロヴィチ
記述形(一部抜粋)
アントン・チェーホフ
チエーホフ
チェホフ
チェーホフ
A.P.チェーホフ
アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ
アントン・P.チェーホフ
A.チェーホフ
アントン・パヴロヴィチ・チェーホフ
いろいろな組み合わせで表記されているのがわかります。典拠ファイルでは、図書に表記された形を記述形として記録し、統一形のもとにまとめています。
舞台のはなしに戻りますが、観ていると、たまに「コンスタンチン・ガヴリーロヴィチ」というように、本人の名前+父称で呼びかけられることがあります。これは敬意をもった相手に対するとき、かしこまった状況であるとき、などの呼び方なのだとか。次にロシアの人の出てくる舞台を観るときは、こういったことを頭に入れておくと場面の状況がよりわかりやすくなるかもしれません。