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「折帖」補論(5)―提案・「貼り合わせ帖」は?

こんにちは。AS 伊藤です。主に和漢古書を担当しています。

前回、「片面折帖仕立て」「両面折帖仕立て」について改めて見てきました。最後に、国文学研究資料館の『和書のさまざま』で「画帖装」と呼称している装丁について、検討しましょう。
このタームは、国文学研究資料館の「日本古典籍講習会テキスト」でも使われており、「画帖装 紙を二つ折りにし、外側の、折り目と平行の端を糊付けして順次繋げたもの。主として、1 枚で完結する絵などを集めて冊子にする場合に用いられる。あまり古い例は見ず、江戸中期以降に工夫された装訂か。版本の例が多く、そちらが先行するかも知れない。」(落合博志氏)とあります。もっとも、表紙で覆うことは触れていませんので、「片面折帖仕立て」の画帖のことも含んでいるのかもしれません。
佐々木孝浩氏も、前述のワークショップ資料で、「片面折帖仕立て」のものとあわせて「画帖仕立て」として説明しており、「形状は折本に近いが、料紙を背合わせに貼り合わせたもので、片面しか使用できない。背を糊付けして固定したものもある。浮世絵類の画帖や書道手本で用いられる。」としています。ここで説明されているうちの「背を糊付けして固定したもの」が、国文研の「画帖装」だ、ということになります。

しかしながら、前回の「法帖仕立」で述べたように、ある特定の内容・ジャンルのものによく見られるからという理由でそれを装丁の名称にするのは、やはり慎重であったほうがよいように思います。その内容・ジャンルのもので別の装丁になっている場合もあるし、また別の内容・ジャンルのものでその装丁のものがあったりもするからです。
「画帖」と一般に称されるものにおいても、装丁としてはこの形態のほか、「片面折帖仕立て」のものも「両面折帖仕立て」のものもたくさんあり、以前見たように、前者については、中野三敏氏が「画帖仕立て」として「画帖類に専ら用いる」と、堀川貴司氏が「画帖仕立」として「画帖に多く用いられます」と説明しています。そもそも、この形態のもの自体は数がそう多くはなく、したがって「画帖」と称される中でこの装丁のものはむしろ少数派です。
実際、堀川氏は「画帖」について、「画帖仕立」とはまったく別の箇所で、「江戸時代の版本では、中国風(水墨画や文人画)の画集を画帖、日本風(大和絵や浮世絵)の画集を絵本と呼ぶことが多いようです。(中略)できるだけ絵画を忠実に再現するために、画帖仕立や粘葉装にして見開き画面が連続するようにしたり、通常の袋綴じでも匡郭・版心をなくしてしまったりしているものもあります」(『書誌学入門』p83)という説明をしており、この説明の次頁には「粘葉装の画帖」として『福善斎画譜』という本の見開き面が掲載されています。この本は中野氏も「包背装仕立て」のところで言及されていますが、いくつかのデータベースでは「折本」と記録されており、中国式の胡蝶装ではなく、国文研のいうところの「画帖装」だと思われます。しかしそれを、画帖を「粘葉装」にしたもの、とここでは呼んでいるわけです。

逆に、この装丁で画帖でない実例も存在します。『二千年袖鑑』とか『越後土産』とかいった本ですが、冊子目録や各データベースでは「折本」「胡蝶装」「粘葉装」「包背装」「旋風葉」等々、いろいろな記録がされているようで、非常に混乱した状態になっています。
粘葉装」としているのは、上の堀川貴司氏もそうですが、紙どうしを糊付けしているという点ではそのとおりではあるにせよ、この装丁では紙の端どうしを糊付けしており、「のど」どうしを糊付けする「粘葉装」とはやはり区別して表記すべきでしょう。
包背装」としているのは、背がつながっていることによるのだと思いますが、中国式の包背装とはもとより、袋綴じや仮綴じのくるみ表紙のものともまったく別ものですので、適当ではありません。ただ、紙のつなぎ方は自体は、『和書のさまざま』などの説明のとおり「片面折帖仕立て」と同じであるわけですから、「折帖の包背装仕立て」という言い方は悪くないかもしれません。
旋風葉」としているのは、前述のとおり、できあがった形としては似ているためだと思いますが、旋風葉は「紙をつなげたものを蛇腹状に畳んだもの」をつながった表紙・裏表紙で覆ったものであるのに対し、これは「紙の端裏どうしを糊付けして何枚も重ねていったもの」をつながった表紙・裏表紙で覆ったもので、紙の貼り合わせ方・つなぎ方が根本的に異なるので、やはり「旋風葉」とするのは適当ではありません。

ということで、この装丁を既存の名称に当てはめるのは、どうしたって無理がありますし、といって「画帖装」という名称が「最適な名称であるとも言いがたい」(『書物學』第8巻p44)というのは上述のとおりです。
佐々木孝浩氏がワークショップ資料「日本古典籍と付き合う」のなかで「画帖仕立て」の例として写真をあげている、『浪花みやげ』という本があります。これは、上述の『越後土産』と同様に番付の類を貼り合わせたものですが、この本については、小野恭靖氏に「『浪花みやげ』の世界」(『日本アジア言語文化研究』9(大阪教育大学教養学科日本・アジア言語文化コース2002)所収)という専論があり、その中で「一枚摺りの貼り合わせ帖」という言い方をされています。実態もイメージしやすいですし、他と紛れることもなさそうですので、この装丁にかんしては、この「貼り合わせ帖」という呼称が、実のところ一番わかりやすいのではないかと思うのですが、どうでしょうか。
「折帖呼称整理表」>(PDF)

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