2月の雑記テーマは「雑誌」です。
先日TVをつけっぱなしにしていたら、「世にも奇妙な物語」の1話「トランジスタ技術の圧縮」から目が離せなくなりました。極厚の雑誌「トランジスタ技術」から広告頁を外し、記事をまとめて圧縮する早さを競う架空の競技の話でした。アイロンで糊を溶かす「アイロン派」と雑誌を破く「むしり派」の対決はVAR判定までもつれ込み「むしり派」が勝ったのですが、大切な「読者投稿ページ」を捨ててしまったことが判明し「アイロン派」の逆転勝ちという落ちでした。スチーム吹き出す高速アイロン技に大笑いしましたが、「トランジスタ技術」という濃い雑誌だからこそより面白かったのだと思います。
濃い雑誌で思い出すのは、子どもの頃誰も読まないのになぜか届いていた「プレジデント」。ビジネス誌なのにまるで歴史本のように武将や三国志ばかり載っていて、〇〇の戦いの仔細を経営戦略につなげまくる分析に世の社長は本当にこんなことを考えているのかと首をひねりました。何万円もする料理が載った「使える店」の連載を食いつくように見ていました。
読者投稿ページで印象的なのは、昔の「MOE」の「イラストセミナー」。コロボックル物語で有名な村上勉が選者でしたが、とても厳しい口調の指摘は儚げなイラストとは正反対でした。でもそれに応えて月ごとに画力が上がっていく投稿者たちを毎月どきどきしながら見守りました。ここを卒業した方たちは、今でも何人も活躍されています。
「装苑」も「装苑賞」を見るために毎月図書館で借りていました。山本耀司など世界トップのデザイナーを指名してデザイン画を送り、選ばれると実際に制作するという流れでした。流麗なイラストが立体化するとまるで別の服になったり野暮ったくなったりも多々あったのですが、そんな試行錯誤を認め励まし、素材・成型への的確なアドバイスをおくるトップデザイナーはとても恰好よかったです。プロのものづくりをする人への尊敬が芽生えました。
図書館の花形のような雑誌もあれば、毎週惰性で買い続けるコミック誌、Jリーグおたくだった頃段ボール数箱も集めたサッカー誌、写真の美しさに思わず買ってしまった大判雑誌、好きな作家や映画が載った1ページのために買ってしまった雑誌もあります。「今買わないともう手に入らない」と、思わず財布を開いてしまうのは本より雑誌でした。そしていざ持って帰ると本棚には収まりが悪くさりとて捨てづらく、何かのはずみに手に取れば当時の時間を閉じ込めた記事に夢中になってしまう時間泥棒。
読者と対峙して磨いた強い個性があり、時代をタイムカプセルのように閉じ込めており、失われると簡単には戻ってこない儚さもある、こういうものを文化と呼ぶのではなどと思ったりします。