こんにちは。分類/件名の高橋です。
小さいころに好きだったお話のひとつに「だんなも、だんなも、大だんなさま」という昔話があります。
あらすじは…ある女中さんが新しいお屋敷に奉公に行きます。
そこのご主人は変わり者で、家中のものに自分流の呼び方を決めています。たとえば、
自分のことは、だんなも、だんなも、大だんなさま。
ベッドは、へばりつき。
ズボンは、ドタバタドカン。
ねこは、色白のおどりんこ というように…
ところがその晩、ある事件が起き、大慌てでご主人を起こしに来た女中さんが言うことには、
「だんなも、だんなも、大だんなさま。へばりつきからおきて、ドタバタドカンをおめしになってください。色白のおどりんこのしっぽに、あついあばれものがもえつきました。はやく、ながれものをとってきてくださらないと、背っ高の大山に、あついあばれものがついてしまいます」
この呪文のような台詞がおもしろくて、女中さんのかしこさにも拍手喝采。母にくりかえし読んでもらいました。
さてこの頃は、仕事のなかでこのお話を思い出すことがあります。
図書の内容を表すキーワードである件名は、統制語であることによって威力を発揮します。
これは同じような概念に対して必ず決まった言葉(件名標目)を使うことによって、図書のタイトルや文中にどんな形で現れていても(あるいはタイトルに現れていなくても)、そのテーマの本を検索できるというものです。
一方で、検索する人が思いつく言葉はさまざまですから、件名典拠ファイル(件名標目を管理するためのファイル)では、類似の言葉から件名標目にナビゲートするために参照形を持たせています。
たとえばこんなふうに。
客室乗務員(航空) 《件名標目》
←スチュワーデス 《参照形》
←スチュアデス 《参照形》
←スチュワード 《参照形》
←フライト・アテンダント 《参照形》
←キャビン・アテンダント 《参照形》
件名を新しく採用するときには、どのような参照形を作成するかも一緒に考えるわけですが、この言葉とあの言葉は同概念ととらえていいのか?微妙に違う訳語がたくさんある外国語にはどこまで対応するべきか?など、悩むこともしばしばあります。
検索する人が思いついた言葉から探せることが理想と考えれば、将来的には方言や幼児語などからも探せるようになるほうがいいのかもしれません。果ては、だんなもだんなも大だんなさまのような、超個性的なお方の検索要求にも応えられるように???
できるだけハードルは低く、でも得られる結果は充実したものに。なかなか難しいですが、日々是精進していきたいと思います。
上のお話で女中さんが何を言っているのか、気になる方はこちらをどうぞ。
石井 桃子
J.D.バトン
福音館書店(2001.7)