こんにちは、典拠班の木内です。
新たな出会いに浮き立つ心、ドキドキする気持ち。それは人名典拠ファイルを作成するときも同じこと。今回の典拠のはなしは、典拠班での仕事内容を実録風にお伝えしてみたいと思います。(わたしだけかも...!?)
先日、視聴覚資料(講談のCD)の人名典拠ファイルを作成していたときの出会い。
旭堂南鱗
旭堂南華
旭堂鱗林
誰なの!?(ビクッ)
という気持ちを抑えつつ、なんだか仰々しいお名前に気圧されながら、心の中でインタビューが始まります。
-----どこかでお会いしたことないですよね?
顔(CD)をじっと見るが、答えは返ってこない。多分ない、うん、ないはず。でも、もしかして?
→ すでに典拠ファイルが作成されていないか累積データを検索します。表記違いや様々な読みの可能性(清濁、音訓違いなど)、別名があればそれも含めて念入りに検索。
※累積データに該当の典拠ファイルはありませんでしたが、類似の名称として「旭堂南陵(キョクドウ,ナンリョウ)」を発見。調査の手がかりが見つかりました。
-----お名前はなんとお読みするのですか?
顔(CD)をじっと見るが、答えは返ってこない。キョクドウ...ナ、ナン...? 呼びかけたいのに名前の読み方がわからない...
※手に取ったCDには読みの記載なし
→ 作成する典拠ファイルは漢字形に対応するカタカナ形(読み)は必須項目です。図書やCDなどの目録作成対象から読み方がわからなければ、資料調査に進みます。
-----世系(〇代目)とかあるんですか?
顔(CD)をじっと見るが、答えは返ってこない。講談師も落語家みたいに〇代目とかあるのかな...?
※CDの解説書に著者紹介はあるが、世系(〇代目)については記載なし。
→ 世系(〇代目)が参考資料などから判明した場合は一人目から付記しています。
→ 著者紹介等から生年や肩書がわかれば、参考生没年や職業・専門欄に入力しています。
-----講談っておもしろそうですね?
顔(CD)をじっと見るが、答えは返ってこない。
このCDを聴けばわかる、と言いたげな顔に見える...あれ?若干不機嫌になった?
(→ 仕事で手に取った図書やCDなどから、思わぬ世界を知ることがあります!)
心のインタビューに成果なし(CDから欲しい情報得られず。特に読み方)。何もわからない。心が夕暮れ。ぢつと手を見る。
冗談はさておき。ぢつと手を見ている場合ではなく。
→ MARC同様、典拠ファイルも調査、作成を含め3~5日で完成させなければなりません。
その世界では有名、当時は時の人だったとしても、その世界に詳しくなければ、まったくわからない。なんてことにしょっちゅう出くわします。アイドルグループの名前、SNSのアカウント名、伝統芸能関係、明治期の著者の名前などなど。今回の方々は現在活動されている現役の講談師さんなのですが、昔から脈々と受け継がれているお名前の可能性があるため、次のような調査をしました。
まず調査の入口である「人物レファレンス事典」(日外アソシエーツ)を確認。次いで「芸能人物事典」(日外アソシエーツ)、「日本芸能人名事典」(三省堂)、「現代日本人名録」(日外アソシエーツ)、オンラインデータベース、所属団体ホームページ、Web NDL Authorities(国立国会図書館典拠データ検索・提供サービス)等。読みの根拠が確かな資料を求めて、各種人名辞典やインターネット資料を当たっていきます。
-----掲載あり!でも読みが無い!(泣き!)
→ 読みが判明するまで調査は続きます。それでも読みが分からない場合は推定します。
参考記事:万策つきて推定 ~典拠のはなし~
所属団体やご本人へ連絡をとり情報を確認させていただく場合もありますが、今回は調査により読みを採用することができました。
旭堂南鱗(キョクドウ,ナンリン)
旭堂南華(キョクドウ,ナンカ)
旭堂鱗林(キョクドウ,リンリン)
ぜひTOOLiでご確認下さい。そして前回の典拠のはなしで取り上げた出典コードをご覧いただくと、何を根拠として読みを採用しているかが分かります。
参考記事:根拠があります~典拠のはなし~
この読み、出典コードにたどり着くまでの実録風景(コント?)はわたしだけかもしれませんが(!)、典拠班ならではの動揺、心の叫び「なんて読むの!」「人なの?団体なの?」「この記号はなに?」。読みにたどり着けたときの達成感(心の中でガッツポーズ!)があるのは事実です。
実録!典拠作業、いかがでしたでしょうか。
典拠ファイルをより身近に感じていただけたら幸いです。