前々回の典拠のはなしでは、個人名典拠ファイルの標目限定語に
ついてお伝えしました。
2番目に出現した同名異人以外でも、架空の人物やテレビ番組の
登場キャラクターなど、標目限定語を付加して典拠ファイルを
作成し、より識別しやすくなりました。
この標目限定語は、団体名典拠ファイルにも付加しています。
個人名典拠ファイルと多少ルールが異なる部分もありますが、
基本的に、同一名称で異なる団体であるという区別のために、
所在地や設立年、団体の種類を表す語などを付加しています。
1団体目 クレイ ...株式会社 ※標目限定語なし
2団体目 クレイ(1985~2016)...株式会社
3団体目 クレイ(音楽グループ) ...スウェーデンのバンド
寺社については全国の地域に同じ名称のお寺や神社が多数存在する
ので、既存のファイルに同名の寺社がなくても、識別のために
1団体目から標目限定語として所在地を付加しています。
熊野神社(福島県岩代町)
熊野神社(岐阜県国府町)
熊野神社(橋本市)
さて、この標目限定語の所在地の地名について、記録の基準を
変更しました。
これまでは、図書刊行時における地名を標目限定語として
記録していましたが、2022年から、MARC作成時の
最新の地名を記録することといたしました。
これは下記日本目録規則2018年版(NCR2018)の規則への
準拠に依ります。
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NCR2018条文
#28.1.2 団体と結びつく場所 (一部抜粋)
同一名称(近似した名称を含む)の他の団体に対する典拠形アクセス・ポイントと判別するために必要な場合は、団体と結びつく場所を優先名称に付加する。
団体と結びつく場所の名称が団体の存続期間中に変化した場合は、最新の名称を優先名称に付加する。
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上記に則り、新規に作成する団体名典拠ファイルは、
例えばこのようなイメージになります(以下は架空の例示です)。
1990年に刊行された「厳島神社国宝展」のカタログの
責任表示(著者)「厳島神社」の団体名典拠ファイルを
2022年に作成
※刊行年時の所在地の地名は宮島町。2005年11月に
宮島町は廿日市市へ編入
↓
〈MARC作成時の地名を記録して作成〉
厳島神社(廿日市市)
図書刊行時の地名を記録して作成するとこうなります。
〈図書刊行時の地名を記録して作成〉
厳島神社(広島県宮島町)
既存の団体名典拠ファイルについては、合併や編入等で、
標目限定語として記録している地名に変更が生じたことが
判明した場合は、最新の地名へ変更するというメンテナンスを
行っています。
〈訂正前〉
瑞泉寺(富山県井波町)
↓
〈訂正後〉
瑞泉寺(南砺市)
←瑞泉寺(富山県井波町) ...参照形を作成
※2004年11月に井波町や福野町などが合併し南砺市が誕生
旧地名でも識別できるように、旧地名を付加した形の参照形も
作成しています。
現在の地名との乖離がなくなり、典拠ファイルをより活用して
いただきやすくなります。