« 2021年7月 | メイン | 2021年9月 »

2021年8月 アーカイブ

2021年8月31日

すぐそこにあった陰陽道

本日は週刊新刊全点案内2223号の発行日です。
掲載件数は917件でした。


*こんな本がありました*

はりま陰陽師紀行

播磨学研究所(編)
復刊ドットコム(2021.8)

陰陽師の解剖図鑑
川合 章子(著)
エクスナレッジ(2021.8)

今週は陰陽師に関する本が2冊ありました。
陰陽師といえば安倍晴明。日本においては名前だけなら知らない人もいないであろうこの人も、両方の本で大きく扱われています。
現代でのイメージですと式神を操ったり悪霊を封印したりファンタジーチックな感じですが、彼らは実際に明治時代になるまで人々の暮らしと共にあったそうです。生活の様々な吉凶を占ったり、暦や時間を管理したりもしていて、本当に当時を生きる人々にとって身近なものだったのでしょう。
そんな陰陽師の世界を見ることができるこの2冊、「はりま陰陽師紀行」では安倍晴明と蘆屋道満、そして播磨という民間陰陽師の中心地だったといわれる場所を中心にルーツを紐解き、「陰陽師の解剖図鑑」では鬼を祓ったり星を観測したりする陰陽師の仕事や安倍晴明、賀茂保憲など様々な人物、そして陰陽道と陰陽師の歴史を解説しています。
つい150年ほど前まで人々のすぐ隣にあった陰陽師が一体どんなものだったのか、調べてみるのも面白いかもしれません。

2021年8月30日

「折帖」補論(3)―中野三敏氏の説明

こんにちは。AS 伊藤です。主に和漢古書を担当しています。

前回、国文学研究資料館編『和書のさまざま』の説明を見ましたが、2019年の11月に亡くなられた中野三敏氏は、『書誌学談義―江戸の板本』(岩波書店1995)の第四章「装訂」で、「帖仕立て」という節を設けて、「帖仕立ては元来、巻物を巻く代りに、何がしかの幅をきめて折り畳み、最後に表紙をつけて製本するものを言う」と定義し、「板本の帖仕立て形式は要するに糸綴じをしないということを条件として、(イ)に折帖仕立て、(ロ)に画帖仕立て、(ハ)に包背装仕立ての三種を考えればよかろう」(p74)と書かれています。

最初の「折帖仕立て」については、「帖仕立ての最も基本的なもので、元来が仏典・経文などには極めて多いが、特に書道の法帖などに多いため、「法帖仕立て」の称もある」とあり、あげておられる例からすると、いわゆる折本のことのみを指しているようです。
つぎの「画帖仕立て」については、「これは紙を折り畳んだものではなく、粘葉装の製法を応用したと思われるもので、摺刷された本文用紙を中表(なかおもて)に―即ち印刷面を内側に―折り、それを重ね、印刷されていない面の両端に糊をつけて貼り合わせ、最後に折帖仕立てと同じように前後に厚手の表紙か板表紙をつけたものである。画帖類に専ら用いるので「画帖仕立て」と称するのが良かろう」と説明されており、谷折りした紙の背面の端どうしを糊で貼り合わせるということなので、『辞典』の「片面折帖仕立て」と基本的に同じものを指すと見てよいようです。

三つ目の「包背装仕立て」ですが、ふつう「包背装」というと、袋とじにした紙を重ねて糸や紙縒りで綴じたものを、折り目と反対がわから一枚の紙でくるんだ「包み表紙(くるみ表紙)」のものを言いますが、中野氏は「唐本としては比較的多い装訂である。要するに下とじをした粘葉装という感じであろう。」とした上で、「しかし和本の版本でこうした姿の物は五山版にはあるが江戸期に入ってからは殆どなく(中略)若干違った説明が必要である。簡単に言えば、中身は前項の画帖仕立てで即ち中表に折ったものと重ねて表紙だけを右の説明通りのくるみ表紙にしたものといえよう。即ち、前後各々個立した厚手の表紙をつければ画帖仕立て、殆ど本文と共紙とも言えるような表紙で背中からくるんだものが包背装と思えばよい。」と書かれています。この説明によれば、「画帖仕立て」にあたるものを表紙で背を包んだものということですから、この「包背装仕立て」は、『和書のさまざま』の「画帖装」にあたるということになります。
ただ、「画帖仕立て」のほうは谷折りした紙どうしの裏がわの両端を糊付けするのに対し、ここで「いずれも画帖仕立てもあれば、ここにいう包背装のものもある」好例としてあげられている『十竹齋書畫譜』や『芥子園畫傳』といった図書の実物を見てみると、これらは、谷折りして重ねた紙の折り目を、背中からくるんだ紙に糊付けするという、むしろ洋装本に似た構造がその基本になっています。こうしたものではほんらい、紙の折り目すなわち版心(書口)のほうを糊付けし、端のほうは糊付けしていないので、丁を繰るごとに印刷面とその裏面とが交互に出てくることになるのですが、両端どうしをすこし糊づけして袋状にするという「二枚ずつ撥ねる不便を除かうとして考案された一便法」(田中敬著『粘葉考』(巖松堂書店古典部1932)七)がしばしばとられているために、上記のような、「画帖仕立て」にあたるものを表紙で背中からくるんだものという説明が成り立ちうることになっていると考えられます。

こうしたものを、「帖仕立て」の一種として扱うのは、必ずしも一般的ではないと思いますが、「帖」というターム自体に、意味・用法が複数あるということが、こうした扱いの背景としてあるかもしれません。すなわち、「帖」のメインの意味としては、「料紙の端から一定の幅に折り畳み、前後に表紙を付けた装訂による書物を総じて呼ぶ名称。帖装・帖装本ともいう。折本の別称とするのが一般的である」(『日本古典籍書誌学辞典』p291)ということなのですが、折本・旋風葉および時には粘葉装・列帖装の冊子を数えるときの単位としても「帖」が用いられるということがあります。また、以前にも触れたように、「列帖装」という装丁の名称は、重ねた紙を一くくりにした「折り」を「帖」の単位で数え、それを列ねたものということからくる呼称だったりします。

2021年8月26日

フィギュアスケートに夢中だったころ

今月の雑記のテーマは「記憶に残るオリンピック」です。

p20201223.jpg

記録に残っている最古のものは、実家の自分のアルバムに貼り付けてあったコレです。画像には写ってませんが、端っこに大人の字で「47年2月4日よりサッポロオリンピック」。こんなビンテージものの落書きを取っておいてくれた親に感謝ですが、当然記憶はなく記録だけです。


記憶では1988年カルガリーオリンピックで突然フィギュアスケートにはまってしまったことでしょうか。そのころは最初にコンパルソリーという規定演技があり、音楽は無しで氷上に決められた通りの図形を描いて滑る正確さで点数が付く種目でした。あまりに地味なので中継はされず、ニュースで誰それがコンパルソリー何位のようなダイジェスト映像が流れるのみだったのまで気にしていた自分ははなんて暇だったのか...。


女子シングルでは伊藤みどりのトリプルアクセルやカタリーナ・ビットの美しい演技に酔いしれました。そしてベステミアノワ/ブキン組のアイスダンス! 80年代に流行ったボリュームのある髪をなびかせながら滑る姿に心惹かれ、とても応援していた記憶が。使用曲のイーゴリ公(韃靼人の踊り)は今でも大好きな曲です。当時ビットは東ドイツ、ベステミアノワ/ブキンはソビエト連邦の人でした。そのぐらい昔の話でございます。


2021年8月25日

きょうのデータ部☆(8/25)

a.jpg

データ部フロア入口の扉には現在、手洗い励行のポスターが貼ってあります。
小鬼くんの表情が何とも言えず、キュートです。

2021年8月24日

言語学の自由研究

本日は週刊新刊全点案内2222号の発行日です。
掲載件数は1414件でした。


*こんな本がありました*

「自由研究ようこそ!ことばの実験室コトラボへ」

松浦 年男(著)
ひつじ書房(2021.8)

え? ひつじ書房なのに、利用対象が小学生!?
ちょっとした衝撃でした。
研究者向けの学術書が多いというイメージのひつじ書房から刊行された、小学生向けの自由研究手引書です。
「『人』の音読みに「にん」と「じん」があるのは?」
「『黒い鳥のたまご』 黒いのは「鳥」? 「たまご」?」
簡単に答えられない本格派の疑問の数々。
うちの子も、こんな疑問を持てる子に育てたかったです。

もうすぐ夏休みもおしまい。
うちの小学生は明日が始業式ですが、ドリルのまとめテスト、8月中旬で止まっている一行日記、ゴーヤの観察カード、リコーダーの練習と手つかずの宿題が山積しています。
母が仕事から帰るまでにどこまで終わっているか。
ああ、帰りたくない...。

2021年8月27日

お手軽旅行気分~MARCや検索のはなし~

なかなか外に出られない夏ですが「せめて旅行の気分だけでも味わいたい」ということで、世界中の美しい景色を収めた写真集が欲しいなと思っています。一般人には足を踏み入れられない秘境や世界の果てのうっとりするような絶景が見たいです!


さて、TOOLiで探してみましょう。
資料形式「写真集」を選択。これは件名の有無・種類にかかわらず写真集を拾うことができるので便利です。しかし、おそらく多すぎるのでタイトルに「絶景」とつくものに限定してみます。いくつかあげるとこのような感じ。


地球一周365日世界遺産絶景の旅」件名:世界遺産-写真集
365日京都絶景の旅」 件名:京都府-写真集
極地絶景」件名:北極地方-写真集
絶景姫路城」件名:姫路城-写真集


是非大きいサイズで見たい!という場合は大きさも検索対象にすることができます。例えば30cm以上を掛け合わせてみました。


絶景石垣の郷」大きさ: 31cm
神秘の絶景写真:アメージング・ジャパン」大きさ:37cm
「飛山濃水」-絶景の源流」大きさ:31cm


但しこれは図書の背の高さ。写真集は横長のものも多いので、その場合は書誌詳細画面で大きさをご覧ください。19×28cmなどと縦と横の長さを「×」で結んであり、右側の数字が大きいものがワイドな横長本です。


件数を絞るために「絶景」を検索キーにしましたが、世界遺産の写真集がもっと見たいなと思ったら、タイトルから「絶景」を抜き、件名に「世界遺産-写真集」を入れて再検索。世界遺産の写真集が検索できます。


実際に行くのは時間もお金も大変だし、なんとか行けても天気が悪かったら...などと考えるにつれ、やっぱり絶景は写真集がいいかも。表紙の数々を見ているだけでも、心が清らかになっていく気がします。眼福。

2021年8月23日

「折帖」補論(2)―国文学研究資料館『和書のさまざま』の説明

こんにちは。AS 伊藤です。主に和漢古書を担当しています。

「折帖」と呼ばれるものについて、前回『日本古典籍書誌学辞典』および『日本古典書誌学総説』の説明を見てきましたが、これに対し、以下のように、やや異なった説明がされていることもあります。

国文学研究資料館編『和書のさまざま』(和泉書院2015)では、「折帖仕立」として「谷折りにした料紙を重ね、一方の端裏(はしうら)ともう一方の端裏どうしを糊付けして継いだ本。折本とは料紙の貼り合わせ方が異なります。裏面(糊付け部分のある方)は使用できません。」(p4)という説明があり、寛政7年刊の『集古帖』という縦長の法帖の写真が実例として掲載されています。すなわち、『辞典』の「片面折帖仕立て」に該当するということになります。
つづけて、「画帖装」があげられていますが、こちらの説明は「折帖仕立と同様の作りで、その背を表紙で覆った本(ですから、折帖仕立てのように何丁にもわたって展開することができません)。絵を見開きで鑑賞するのに向き、江戸時代後期に普及しました。絵を伴った版本に多く見られます。」というもので、表紙と裏表紙をつなげて背を覆っていることをその要件としています。
実例としてあげられているのは、「折帖仕立と同様の作り」とあるとおり、「片面折帖仕立て」と同様に谷折りにした紙の端裏どうしを糊付けしていって、表紙と裏表紙をつなげた『潮干のつと』という絵本です。たしかにこのような装丁のものは江戸後期から明治にかけての絵本・図集などで時々見るのですが、図版ではない図書もあります。できあがった形態としては、折本の背を表紙で覆った「旋風葉」とすこし似ていますが、前回見たように、料紙の貼り合わせ方が異なるとして折本と折帖とを区別するならば、やはり「旋風葉」とは区別しなければならないでしょう。

この『和書のさまざま』では、『辞典』の「両面折帖仕立て」にあたるものの説明はありません。ただ、この書籍のもとになった国文学研究資料館のWebサイトに搭載されている「ヴァーチャル展示 和書のさまざま ~書誌学入門~」(最終更新2002年7月)というページでは、「第一部 本をかたちづくるもの I 装訂」の「折本」の項目には「帖装本ともいい、横に長くつなぎ合わせた紙を一定の幅で折り畳み、前後に表紙をつけたもの。経典や習字手本などに多く用いられる。また古筆鑑や画帖などの折帖仕立て(画帖仕立て)も折本の一つ」という説明があり、ここで例として「集古帖(寛政七年刊)」と「奈良絵豆扇面絵」の画像があげられています。前者は上記の和泉書院刊の『和書のさまざま』に掲載されていた「片面折帖仕立て」の法帖そのものですが、後者は『辞典』の「両面折帖仕立て」にあたる貼り込み帖です。
なぜ和泉書院刊の『和書のさまざま』において、「奈良絵豆扇面絵」の例が掲載されなかったのか、経緯はわかりません。ただ、「経典や習字手本」の例である「集古帖」につづけて、「肉筆の古筆鑑や画帖などの折帖仕立て(画帖仕立て)」の例に相当するこの画像を掲載すると、『和書のさまざま』では、「版本に多く見られる」ものとして「画帖装」という装丁を別にあげているわけなので、混乱を招くだろうということがあったのかもしれません。この「画帖装」という名称については、後ほど改めて考察したいと思います。

2021年8月20日

トム・ディック・ハリー ~典拠のはなし~

先日、本を読んでいる時に次の台詞にひっかかってしまいました。
「ハリー、きみにはぼくの気持がわからないのだ」

...え、ハリーって誰?

どうみても相手に呼びかけている台詞なのに、なぜ私がそんな疑問を抱いたか。
それは、読んでいたシーンにはバジル・ホールウォード氏とヘンリー・ウォットン卿の二人しか出てきていないから。
はい。「いや、わかるでしょ!」と総ツッコミを受けてしまいそうですね。ハリー=ヘンリーであり、この台詞を口にしたのはバジルの方です。(ちなみに直前にはヘンリーが喋っており、しかもその中でバジルと呼びかけているので、考えるまでもなく明らかです。)

以上は、私がどれだけ集中せずに本を読んでいたかという話にすぎませんが、日々人名に向き合う典拠班にとって、この「愛称」というのはなかなか重要なトピック。
月に1回お届けしている典拠のはなし。今月は西洋人の愛称について考えてみます。

日本人の感覚では、愛称を図書の責任表示に使う、というのはあまりないように思います。
しかし、西洋人の場合は、学術論文などお硬めの本でも、責任表示が本名でなく、愛称や通称、短縮形などで書かれていることが多々あります。Tom、Bob、Mikeなどなど。(それぞれThomas、Robert、Michaelなどの愛称として知られていますね。)
西洋人の愛称を日本のいわゆる「ニックネーム」の感覚で考えてはいけない、というのが典拠班メンバーとなって学んだことの一つです。

典拠ファイルの統一形は、初出図書に表れている形、あるいは参考資料等に多く見られる形で作成するのが基本なので、統一形が本名ではないということは決して少なくありません。
例えばこちらの方。

統一形:Gregory,Dick
←記述形:ディック・グレゴリー
←参照形:Gregory,Richard Claxton

初出図書は
nigger ディック・グレゴリー自伝
ディック・グレゴリー(著)現代書館(2021.1)

ディック...これはひょっとして...(何かの愛称かも)と思いつつ、図書をめくっとみますと
文中にRichard Gregory Claxtonという表記、そしてDickが通称である旨の記載がありました。DickはRichardの愛称なのですね。

しかし、責任表示に表れているのはディック・グレゴリーの形。
VIAF(バーチャル国際典拠ファイル)なども参照し、コメディアンとして知られている名前もディック・グレゴリーのようでしたので、統一形はGregory,Dickとなりました。
Gregory,Richard Claxtonの形は参照形として作成します。

典拠ファイル作成中に愛称らしきものが出現した際は、「本名ですでにファイルができていないか?」と累積ファイル検索時点でいつも以上に慎重になります。(名ワレ厳禁!)
本名と愛称関係を見逃さないよう、典拠班には、辞典類等で確認できた本名と愛称をまとめた自前の愛称データベースというものも存在します。
見ると「えぇ?この名前がどうしてこの愛称になるの!?」と思うものも。

そう...だから「ハリー」を見た時に、私が「ひょっとしてバジルの愛称?」と、ちらと考えてしまったことも無理からぬことなのです。(無理があるか...。)
西洋人の愛称については、こちらの記事もどうぞ。

なお件の本はこちら。
典拠班としてはヘンリー・ウォットン「卿」も気になるところですね。

ドリアン・グレイの肖像 改版」(新潮文庫)
ワイルド(著) 福田恒存(訳)新潮社(2004.7)

2021年8月18日

きょうのデータ部☆(8/18)

a.jpg

昨日までは少し肌寒いくらいだったのに、一転本日は晴天で蒸し暑いです。
かと思えば天気雨が降り始めたり。夏の天気は気まぐれですね。

2021年8月19日

チャレンジ精神

開幕までは、開催そのものに様々な声があった東京五輪でしたが、選手たちの果敢に立ち向かう姿や、諦めずに前を見据える眼差しに、全力で応援せずにはいられない、勇気をもらった。そんな人も多かったと思います。
翌週からはパラリンピックがスタートします。熱気をまた届けてほしいですね。

頭の中を掘り起こすと、自分の中でのオリンピックのいちばん古い記憶は、長野オリンピックです。
数家族で白馬などへスキー旅行にときどき行っていたこともあり、ウィンタースポーツに今よりももう少し親しみを感じていました。
クロスカントリーは、斜面を滑るだけではなく平地でもスキーができるんだ!と衝撃を受け、真似をしてみたいけど実際は進むのに腕と脚が疲れそうだと思ったり、勢いよく滑り降りて飛距離や美しさを競うジャンプをはらはらしながら見つめたりしていたのを思い出しました。
風にうまく乗ったのか、安定した綺麗なフォームと空中を滑空する滞空時間の長さはルールを理解していなくても見てとれ、すごいなと心を動かされました。
当時の錚々たる代表選手8名の中から、競技に出場できたのは4名。出場者の選出にも様々な思いが渦巻いていました。そんな最強の布陣で臨んだラージヒルの団体。強く印象に残っている人も多そうですね。
競技は荒れる雪の中で行われました。1回目、飛距離が伸びずに終わった原田選手、先のリレハンメル五輪で団体金メダルを惜しくも逃した状況が髣髴とされ、その重圧たるや筆舌に尽くしがたいものだったと思います。
最後の船木選手のレコードが出てその雪辱が晴らされたことが確定した瞬間、原田選手が船木選手に駆け寄り、日本中が沸き立ちました。
当時は背景を理解しないままにも、悲願が達成されたことを知り、普段はライバル同士の仲間とともに世界のトップを目指すことの素晴らしさを感じました。
普段はスポーツ観戦をほとんどせずに五輪やWCのお祭りのときだけ便乗する自分ですが、選手たちの熱い思いに触れ、ともに気持ちを奮い立たせることができるのは良いですね。
ジャンプのレジェンド、葛西選手の北京五輪出場への挑戦も見守りたいです。
自分自身もチャレンジする気持ちを忘れずにいたいので、いまの状況が収まったらなにか身体を動かすことに挑戦したいと思っています。目下は最近読んだ本の影響で登山に関心がありますが、はたして?

2021年8月17日

ご近所に古墳はありますか?

本日は週刊新刊全点案内2221号の発行日です。
掲載件数は1054件でした。


*こんな本がありました*
「知られざる古墳ライフ え?ハニワって古墳の上に立ってたんですか!?」

譽田亜紀(著) スソアキコ(イラスト) 松木武彦(監修)
誠文堂新光社(2021.8)

2220号の今週の一冊につづき、お盆をはさんでまたしてもお墓です。
といってもこちらは、お墓としての古墳の説明ももちろんありますが、古墳「時代」にも焦点を当て、「古墳(時代の)人」の暮らし、社会を分かりやすく紹介する一冊。

古墳は全国に16万基以上あるそう。古墳時代を3世紀中頃から7世紀のざっくり450年くらいと考えると、平均で年355基以上が築造された計算になってしまうのかと驚いてしまいました。もちろん大小さまざまですが、ほぼ一日一古墳ですか...。
大仙陵古墳(仁徳天皇陵)の築造に関して試算されたデータがあり、工期はおよそ16年、作業延べ人数は680万人以上と見積もられているとのこと。
地域にもよりますが、「古墳人」は本当に人生を古墳築造とともに送っていたのかもしれません。
そんな「古墳人」の衣食住や職もイラスト多数で楽しく分かります。以前、埴輪を見てもどうなっているのか謎だった髪形、イラスト図解で疑問が解消しました。

2021年8月16日

「折帖」補論(1)―『日本古典籍書誌学辞典』の説明

こんにちは。AS 伊藤です。主に和漢古書を担当しています。

以前、装丁(ほんらいは「装訂」ですが、NCRに従っておきます)にかんして述べたところで、「折帖(おりじょう)」というものについて簡単に触れましたが、この「折帖」の実態と説明については、各種参考資料で食い違いと混乱が見られます。この点について、改めてすこし整理しておきたいと思います。

『日本古典籍書誌学辞典』(岩波書店1999)には「折帖仕立て」という項目があり、「折本の一形態。画帖にも用いられるので「画帖仕立て」という。中国で始まった装訂で、日本では桃山時代、ないし近世初期の古筆手鑑からとされる。書道の手本として近世に刊行された金石文の拓本や、これに倣った石版・木版陰刻による書物、法帖の装訂にもよく用いられたため、「法帖仕立て」ともいう。」(p90)という解説があります。具体的には「紙を貼り合わせた厚い料紙を、表を内側に二つ折りにして継いでいくが、その方法によって片面のものと両面のものとの別が生じる。」とあり、谷折りにした紙どうしを糊付けして冊子にしたものということになります。
この『辞典』の説明文は、基本的に藤井隆著『日本古典書誌学総説』(和泉書院1991)の記述(p59-60)を整理したもので、『総説』の記述のほうがやや詳しいので、片面・両面それぞれについて、『総説』のほうを見てみましょう。
片面折帖仕立ては、「別称としては「突合わせ折帖仕立」「糊入れ画帖」などがある。料紙を一枚一枚―但、この場合の一枚は、それぞれ貼り合わせた厚い紙である―表を内側にして二つ折にし、糊で継いでいくのであるが、(中略)折目のほうではなく、折目と反対の紙の小口(端の紙の切り口)の方の紙の裏面と裏面を突き合わせて(二枚の紙の端を揃えて二枚の裏面と裏面が接するように重ねて)端に近い部分の裏面の上から下まで五ミリから一センチ程を糊付けして、次々に重ねるのである。一見折本のような感じに見えるが、表からめくると完全に各面が見開きに開くけれども、裏面は途中までしか開かず、全く使用できない。」というもので、要は谷折りした紙を端の裏どうしで糊付けして折本のかたちに仕立てたものです。縦長本の法帖(書道の手本)に多く見られ、『総説』p58の<図32>であげられているのは法帖の写真です。しかし画帖にも多少は見られ、『辞典』の挿図にあげられているのは横長の画帖の写真です。
両面折帖仕立てについては、「料紙(この場合も貼り合わせた厚い紙)を表を内側にして二つ折にしたものを、一枚ごとに切替して、裏面全体に糊を付けて、裏面と裏面を重ねて貼り合わせて行くのである。即ち前の紙の折目に、次の紙の端(小口)を合わせて重ねる―同時に前の紙の端(小口)に次の紙の折目が揃うことにもなる。三枚目の紙は二枚目の紙の折目に紙の端(小口)を合せて重ねる―これを続け繰返すのである。完成したものは全く普通の折本と同様の形と扱いとなり、然も帖の表面も裏面も全部紙の表面が出ていることになって、更にすべての面が一枚の紙の見開きであるわけで、各見開き面に絵を書くのに都合良く、帖を解体した時にも絵は見開きの大きさで完全に剥がすことが出来る。」とあります。「切替して」というのがちょっとわかりにくいですが、谷折りした紙を半丁分ずつずらしながら一枚ごとに逆向きに重ね、谷折りの背面どうしをべったり貼り合わせて折本のかたちに仕立てたものです。こちらは、「絵を描くのに便利」ということから、基本的に多くが横長本の画帖の類であるようです(『総説』p58の<図33>であげられているのは白紙の両面折帖仕立てのものです)。

いずれも、できあがった形態としては「折本」と基本的に同じであり、たしかに「折本の一形態」という説明が当てはまります。ただ、ふつうの折本というのは、歴史的には巻物から発達してきたとされるとおり、前紙の左端裏と後紙の右端表―表裏逆の組み合わせもありえますが―を糊付けして長くつなげたものを、つなげた個所とは無関係に折りたたんで蛇腹式にしたものを言いますので、厳密には区別したほうがよいという立場もあるわけです。

2021年8月 6日

データ部ログ更新お休みのお知らせ

TRCデータ部は、8月9日(月)から13日(金)まで、夏季休業となります。
ブログの更新もお休みさせていただきます。
猛暑が続きますが、くれぐれも体調にはお気をつけてお過ごしください。

2021年8月 5日

楽しく走る

今月の雑記のテーマは「記憶に残るオリンピック」。
東京五輪は波乱尽くしに進んでいますが、これまでの様々な大会において、アスリートたちの粉骨砕身する姿に胸を打たれたことがある方も多いのではないでしょうか。

このお題でまず頭に浮かんだのが、2000年開催のシドニー五輪での女子マラソン。「Qちゃん」の愛称で親しまれた高橋尚子さんが金メダルを獲得しました。

自分はマラソンはおろか走るという行為そのものが大の苦手でしたが、高橋さんの力走を食い入るように見つめたことをよく覚えています。他の優勝候補を引き離し、自分のペースを守りゴールテープで両手を掲げた姿はとても美しく、「楽しかった」とカメラに向けた笑顔も、それはそれは眩しいものでした。

当時のインタビュー記事を読んでみると、「レース前から楽しみで仕方なかった」「楽しもうと思って臨んだ」と前向きに語る様子が数多く記録されていました。スポーツは基本的に勝利にこだわるものですが、自分のために楽しむことの意味を示した高橋さんは、オリンピック陸上女子に初の金メダルをもたらすという偉業を成し遂げたと同時に、多くの人に大きな希望を与えたと思います。
日本ではその後マラソンブームが起き、競技人口も増えたそうです。

「自分との戦い」の面が大きいマラソン。ランナーズハイとは一体どんなものなのか、一度でいいから経験してみたいものです。

2021年8月 4日

きょうのデータ部☆(8/4)

お向かいの工事現場です。
毎週ちょっとずつ作業が進行している様子が見えて、面白いです。
aaa.jpg

2021年8月 3日

他人のお墓を訪ねる

本日は週刊新刊全点案内2220号の発行日です。
掲載件数は1028件でした。今月の表紙はこちら。

p20210803.jpg
ゴーヤを輪切りにしてみると
表面の沢山のボコボコが、まるで連なる山々の様にも思えたりして
山だらけの惑星?!
回りは宇宙の星々で、明るい緑色の部分は地殻?綿の部分は~。なんてちょっと無理矢理ですね・・・。
(Juriさん)

*こんな本がありました*
「これだけは見ておきたい世界のお墓199選」

ローレン・ローズ(著)
国書刊行会(2021.7)

こんな本が気になるのはお盆が近くなってきたせいでしょうか?

世界中の有名なお墓、美しいお墓、ロケーションの素晴らしいお墓が取り上げられています。日本からも広島の平和記念公園や泉岳寺など何か所がエントリーしています。

旅行に行ったアルゼンチンで、この本でも取り上げられている「レコレータ墓地」を訪ねました。映画でマドンナが演じたアルゼンチンのファーストレディ、エビータのお墓もある有名な墓地です。

墓地とはいっても、棺を納めるための1坪より広い程度の小さな建物が屋外に立ち並んでいます。建物はそれぞれに趣向が凝らされていて、草花の彫刻をちりばめた瀟洒なもの、ギリシャの神殿のようなどっしりしたもの。小さな豪華な建物が見渡す限り並んでいる様子は、まるで小さな美しい街のよう。お墓で観光は不謹慎と思いつつ、すっかり目を奪われてしまいました。

それまでは、お墓といえば、法事やお盆どきに行って、お供えしたり掃除したり、用事があって行く楽しくない場所という印象でしたが、この観光以来見る目が変わりました。

本来の属性とは裏腹?に、お墓にはオープンエアという清々しさもあります。先日近所にある実家のお墓の掃除に行ったら、隣のお寺の境内でラジオ体操が行われていました。ほのぼの。

まだまだ外出に用心がいる今日この頃、お墓の本来の住人の迷惑にならない程度に、近場の墓地のお散歩も良いかもしれません。

もちろん、昼間限定です。

2021年8月 2日

ソーシャルグッドなマーケティング~新設件名のお知らせ2021年7月分~

明日発行の『週刊新刊全点案内』は、巻頭に「新設件名のお知らせ」を掲載しています。
新設件名は、TRC MARCで件名標目を新たに採用したものという意味で用いていますので、NDLSHから採用したものも含まれています。

7月の新設は3件でした。そのひとつが「ソーシャルマーケティング」です。
こちらの本で採用しました。

「ソーシャルマーケティング:行動変容の科学とアート 健康、安全、環境保護、省資源分野等への応用の最前線」

ナンシー R.リー (著),フィリップ コトラー (著),木原 雅子 (訳),小林 英雄 (訳),加治 正行 (訳),木原 正博 (訳)
メディカル・サイエンス・インターナショナル(2021.6)

ソーシャルマーケティングとは、一般的なマーケティングが企業経営という観点からなされるのに対して、社会全体の利益を考慮したマーケティングを指します(ジャパンナレッジ「デジタル大辞泉」参照)。

浅薄な私などは「マーケティング」という言葉につい引っ張られ「結局物を売るんだろ...」と考えてしまいましたが、そういうわけではないようです。
上記の本では、社会的課題の解決にむけて人々の行動変容を促す点が重要、とされており、その応用範囲は広いものになっています。
マーケティングを行う主体も営利企業だけではなく、NPOや協会などの非営利組織も含まれてきます。

日本でも、保健・衛生分野での実践を扱った図書が既に刊行されていました。
「保健スタッフのためのソーシャル・マーケティング 実践編 行動変容をうながす健康教育・保健指導のために」

松本 千明 (著)
医歯薬出版(2008.6)

2024年7月

  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

アーカイブ

全てのエントリーの一覧

リンク