月末にお届けしている「MARCや検索のはなし」、今月は検索の原点を見たエピソードを紹介させていただきます。
ある日、本棚の前でなにやらつぶやきながら本を抜いている6歳の私の娘。
「わたなべしげおさん、わたなべしげおさん、これもわたなべしげおさん…」
彼女が注目しているのはもしや責任表示?
一般的には分かりにくい責任表示という言葉ですが、子どもにも分かるように言うと「本を書いた人」でしょうか。「本棚からわたなべしげおさんが書いた本を抜く」という彼女の動作は、「蔵書を責任表示:わたなべしげおで検索」という作業を超アナログ的に行うものです。これぞ検索の原点だなぁと、わたなべしげお手動検索中の娘をしばし眺めていました。
しかし、日々MARC作成に携わる母にはひとつひっかかることが。
「娘よ、わたなべしげおには漢字表記もあるのだよ…。」
ひらがな・カタカナを読むのがやっとの娘には「渡辺茂男」さんが、今、自分が集めている「わたなべしげお」さんと同じ人だなんて分かるはずもないのです。
もし、娘がこの「わたなべしげおさん探し」を、データベースを使って実行したらどうなるでしょう。コンピュータも子どもと一緒で、見た目が違うものを同じと判断するのは難しいのです。著者名検索で「わたなべしげお」と入れれば、ひらがな表記の「わたなべしげお」の著作しか表示されないか、あるいは「わたなべしげお」と読むすべての著者を引っ張ってきてしまうかもしれません。「渡辺茂男」だけでなく「渡辺茂夫」「渡辺重夫」「渡邊滋夫」などもすべて、というように。試しにTOOLiの図書検索で「わたなべしげお」を検索してみます。すると475件ヒットしますが、前述のとおり「わたなべしげお」と読む別人の著作も表示されます。
著者名検索で思っていたとおりの検索結果が得られなかった場合、是非とも典拠検索を経由してみてください。「わたなべしげお」と入力したら、TOOLiの場合は右端の「典拠」ボタンをクリック。典拠検索で「わたなべしげお」を検索すると、いろいろなわたなべしげおさんが識別情報とともに表示されます。お目当てのわたなべしげおさんは漢字表記の「渡辺茂男」を統一形とし、ひらがな表記の「わたなべしげお」を記述形としてぶら下げた形で表示されます。
11000110106-0000 渡辺/茂男 《統一形》
11000110106-0001 わたなべ/しげお 《記述形》
統一形の「渡辺茂男」で一覧表示を選択すると、絵本作家の「渡辺茂男」さんの著作だけを表示させることができます。典拠検索を経由することで様々なかたちで表記されるひとりの著者の作品をすべて検索することができますし、たくさんの同名異人のなかからお目当てのひとりをしぼりこむこともできます。どうぞご活用ください。
さて、娘のわたなべしげおさん集めですが、典拠検索機能の代わりとして母が漢字表記の渡辺茂男を抜き、もれなく集めることができました。ますます責任表示に興味を持った娘は、「ねぇ、『さく』って何? 『やく』は? ごほん読むとき、ちゃんと『さく』とか『え』とかも読んでよね!」著述の種類を表す語ですね。すみません。今まで責任表示はすっとばして、タイトルしか読んでいませんでした。
そのうち「わたなべしげお『さく』だけを集める」検索もしそうだな。TOOLiで検索するとなると…などと次のネタを考えていると「これ、なぁに? なんて書いてあるの?」と娘の声。 そ、それは奥付ですが…。奥付まで読み聞かせるのは、勘弁してください。